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2014年2月18日火曜日

被災バブルのゆくえ

東北地方でも同じことが起こっていると思うが、あの大災害の後、伊豆大島では様々なところで「被災バブル」が発生している。

災害の起こった10月は本来、観光客も少なく、静かな時期だ。
それが被災直後には、山のようにマスコミが島に押し寄せてきて、島中の宿泊施設ほぼ全てが連日満室状態であふれかえった。

マスコミだけでなく、捜索や復旧の関係の人たちも何百人という単位で来ていたから、食堂やスーパーまで人でごった返すほどだった。
島に人が増えれば、車も増えるし、ガソリンスタンドも大忙しだった。
(※もっとも、 復旧車両の給油所になっていたスタンドだけは、経営していたもう1軒のスタンドが被災して巨額の損失を被っているので、とても「儲かっている」ような状況ではない。誤解なきよう。)

島へわたる船や飛行機も、きっとこの時期はだいぶ搭乗率が良かったのではないだろうか。 

そんなことで、被災してからこっち、一時的に人が押し寄せてきたので、島は完全に「プチバブル」の様相を呈していた。
被災した人間は、住む家を失い、場合によっては仕事まで失って困り果てていたのだが、そのすぐ傍らで、 まるで別世界のようなことが起こっていた。

それは、率直に言って、とても異様な光景だった。
ハッキリ言わせてもらうが、みんな、被災して困窮している人間をダシにして稼いでいたのである。

まぁ、それはそれで別にいい。
ただ、島にどんなにお金が落ちようと、被災して困っている人間のところには、1円もまわらない。
被災した自営業者はみな仕事をする手段を失っているし、それ以外の被災者は、ほとんど年金暮らしか公務員・サラリーマンなどである。
恩恵に預かる手段がまったくないのである。

不思議なことに、この事態で特に稼いでいない人ほど、被災者にあたたかく支援をしてくれた。
コーヒーを無料でふるまってくれたり、メガネ屋さんはメガネを無料で作ってくれた。
風呂を無料で開放した民宿もあると聞く。
(※もちろん、このプチバブルとは無縁だった島民も多い。)

一方、稼いでいる人たちほど、ダシになった被災者にはまったく何もしてくれなかったというのが、私の正直な感想だ。
東北地方では、東日本大震災の時には、多くのホテルや旅館が、家を流された被災者を無料か格安で受け入れたという話を聞くのだが、残念ながら
伊豆大島ではそのようなことは1件もなかった。
(※行政の支援で宿泊施設に宿泊できた被災者はいる。)

別に稼ぐのは悪いことではないし、被災していない人たちだって避難勧告をくらったりして多少なりとも苦労をともにしていると思うのだが・・・これだけは言っておきたい。
同じ小さな島の中だと言うのに、被災した人間とそうでない人間の温度差は、本当にすさまじいのだ。
もちろん親身になってくれる島民もたくさんいるのだが、同じ町内なのに「そんなに他人ごとか・・・!!」ということがたくさんある。 


丸裸の砂地になった被災地は、ゆっくりと侵食されている


それから被災地の土砂やガレキを取り除くだけでも、莫大な労力と予算が必要なのだが、予算は激甚災害に指定されて国が面倒みてくれるので、大量の仕事が発生した。

さらにこれから、何百億円という復興の予算が投じられ、 被災したインフラの再整備や新しい防災対策など様々な公共事業が目白押しである。

だが、残念ながら、このような恩恵は、ほとんど肝心の被災者にはまわってこない
インフラの復旧や整備には、東京都だけでも270億円もの予算を組んでいて、今後も町や国の事業を合わせればもっと膨らむであろう。

しかし、被災して生活に困っている住民のところに直接かけられている予算は、仮設住宅の建設費4億円・・・あとは国や都の支援金としてたぶん全部で1〜2億円くらいである。
他にも、被災者の生活支援のために、公営住宅に家賃無料で一時入居させてもらったり、光熱費の支援など、様々な面の支援を計上していけば、あと1〜2億は積み上がるだろう。
(※あと今後は、復興町営住宅が建てられるので、そこには何億円かかかると思う。)

他に、全国の皆様から寄せられた義援金が10億円ほど、被災者全体に配られることになった。
これが、何より一番大きな被災者の生活再建支援である。
しかし、これは有志の皆様の善意であって、他の支援財源(税金)と並べて論じるのは、そもそもおかしい気がする。

ともかく、こうして比べてみると、人口わずか8000人という小さな町に、何百億円という巨額な予算がインフラの整備として投下され、その被災住民の生活再建には、義援金を合わせてもわずか10分の1にも満たない額しかまわされてこない・・・ということが分かる。

これは、どう考えてもアンバランス・・・というものではないだろうか。
これでは、「インフラ優先で、被災者の生活再建は後回しだ」と批判されてもやむを得ないであろう。


とは言えもちろん、被災して困っている人間など、たったの200人ほどしか居ないんだから、そんなにお金をかける必要はないじゃないか・・・という考え方もできる。
実はそれはその通りなのであって、被災者の生活再建に必要なお金は、それほど大きな金額ではないと思う。

本当のことを言えば、2年しか住まない仮設住宅など建てずに、その予算の4億円を、そのまま住む家のない人に1人600万円ずつ配ってしまえば、それが一番良かったと思う。
あるいは、貸家だった被災者には100万円、持ち家を失った被災者には1000万円とかにすれば良い。

あとは追加で義援金をうまく配分して、被災した土地には今後も住んで良いのかいけないのか、その辺をはっきりしてくれれば、被災者が自分で今後の身の振り方を考えて、ちゃんと自立再建していけただろう。

だが、そのような柔軟な対応がなされず、「必要なところに必要なお金が行かない」から、いつまでたっても不満が噴出して、問題が解決しないのだ。
被災者が必要としている生活再建資金など、限られた金額(それも決まった額)なのだから、それをきっちりリサーチして支援してしまえば、それで生活再建支援はあっという間に完了すると、私は思う。

だが実際には、全体の復興では何百億円という予算がありながら、被災者に直接行き渡る額は少ない。

ハコモノ行政とはよく言うが、インフラや建物には予算がつきやすいが、被災者ひとりひとりに直接支援をする仕組みも未整備だし、それをする気運も極めて薄い。
それが、バブル景気の隣合わせに、困窮する被災者が居る・・・というおかしな状況を生み出しているのだと思う。
(※ちなみに公平を期すために言えば、決して被災者がみんな困っているわけではなく、私を含めて、充分過ぎるほどの支援を受けることができて、 現状まったく困っていない被災者というのも、そこそこの数は居る。)

仮設住宅を建ててもらって、とてもありがたいんだけど、
2年で取り壊すのに1軒600万円はもったいないような・・・


そもそも、わずか8000人の人口を守るために、何百億円というインフラ公共事業が本当に必要なのかどうか、私としては疑問に思うのだが、島の土木事業者の方々にとっては「これで10年間は安泰だ」(←新聞での発言!!)という状況である。

それはそれで島の経済には良いことかも知れないので、別に文句を言うつもりはない。
島の土建屋さんも、復旧活動に大変に尽力して頂き、なおかつ仕事をもらっても入金までの資金繰りが大変だというご苦労もあると聞くので、頭が下がる思いである。

ただ、公共事業で潤う会社には、従業員が本土から出稼ぎに来ている人が多いので、せっかくお金を稼いでもらっても、島の中にあまりまわらない
ましてや、被災者の中で公共事業の恩恵に預かれる職業に就いている人は、ごくわずかだ。

毎日、被災地のガレキを積んだダンプカーが道路をすごいスピードで走り抜けて行き、道を歩いているとよく怖い思いをするのだが、あれも本土から稼ぎに来たドライバーが多いと言う。
効率良く稼ぐために、急いでいるのだそうだ。
復興に協力してくれていると思えば文句も言えず我慢するしかないのだが、島中がダンプカーの巻上げる砂ぼこり迷惑しているし、ダンプの重みで水道管が破裂するほどボコボコになってしまった道路だってある。

こんなところにも、復興バブルのいびつさを感じる。


また、ホテル・旅館などの宿泊施設にしても、今はまだマスコミや復興関係の調査・視察などの人たちがたくさん来ているので、 危機感を感じていないのだろうが、その一方で島にくる観光客は激減している。

現在、1年の半分の観光客を集める「椿まつり」 が開催中だが、観光客は1日に20人ほどしか来ない日がざらだという。
また例年の夏は海水浴客で賑わうのだが、一番人気の元町の海水浴場は、ガレキが流れ込んで危険なので、今年の海開きができるかどうかすら危ない状況だ。
ダメージがくるのはまだこれからなのだ。

これから一時の被災バブルが弾け、復興関係の宿泊者が少なくなってきたら、一体どうするつもりなのだろうか??

この島の産業は、半分は観光、半分が土木公共事業で成り立っている。 (※農漁業にはそこまでの規模はない。)
今、観光客がほとんど来なくなっている現状なのに、土木公共事業に頼って行っても、島の多くの人たちは生計を立てることができないだろう。

伊豆大島は、全国的に見ても急激な人口減少に見舞われている過疎の島で、このまま観光業が衰退していけば、ますます島は廃れていくことだろう。
いくら地元の土建業者さんに復興事業の仕事が入っても、 過疎化を食い止めることはできない。

立派なインフラ整備や防災対策をして頂いても、何年もかかってそれらができあがる頃には、ますます経済も人口もやせ細っている・・・ということになりかねない。

これでは一体、誰のための復旧・復興なのだろうか。

復旧も復興も、結局はただの一時のバブルでしかなく、過ぎ去ってみれば島はさびれ果てて何も残らない・・・そんなことになってしまったりはしないだろうか??


<追記>

最後に、ここまで色々なことを書いておいて何だが、私は、何なら行政の支援などまったく無くても、それはそれで良いと思っている。
インフラ支援は異常に手厚く、生活再建は薄く・・・というアンバランスさに疑問を呈しているのであって、決して「もっともっと支援しろ」などと言いたいわけではない。

何なら行政の手を借りずとも、全国から義援金を募って、それを被災者自身の手で公平に分配すれば、それだけで復興は可能だと本気で考えている。だが、現在の伊豆大島には、被災者にも一般の島民にも、それだけの気概はまったくない

伊豆大島は、被災の前から、国や東京都の補助金漬けの島で、いつでも他人頼みの気質が蔓延している。
今や本土では粛々と消え去りつつある、昭和の「古き悪き日本」がそのまま生きている世界なのだ。

さすがに行政が何にもしないとなれば、自ら何とかしなければ・・・と被災者自身が立ち上がっていくことだろうが、今はまだそこまでは行っていない気がする。

だが、この災害をきっかけにして、被災者や島民からは少しずつ色んな動きが出てきている。
行政主導の「形だけの復興」にならず、住民が自らの手で進める生きた復興が実現するよう、私も、ともに活動していきたい。


5 件のコメント:

  1. 真実はひとつ2014年2月18日 17:49

    被災地バブル。

    まさに福島周辺と同じ。そして今後は山梨などにも・・・。

    お金は上手く上の人間たちの懐へ入るようになっている。あるダンプカーを運転してる人の証言~積み荷は少なく一日何回も走る。そうすれば給料も上がる~ですって!自分の事しか考えてないのでしょう。最後は自分に跳ね返るのに・・・。

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    1. 真実はひとつさん、コメントありがとう!!
      って・・・うひょおぉ!!!!あいつら、カラ荷物運んでるやつおるんかい!!!!
      でも、言われてみれば確かに、荷台に異様に少ないガレキをちょこっとだけ積んで爆走しているダンプやトラックいるよねぇ!!!!!!
      うーー、よく被災した島で、住民押しのけてわがもの顔でそんなことできるよなあ・・・。
      信じられん。

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  2. 貧乏人のくまっしぃは最初の頃、実はちょっとばかしの支援金もらって「うっひょお!!!被災バブルだあ!!!」なんて1人で浮かれていたのですが(恥)、何かこのように状況をよく見てみると、どうもケタが何個も違う儲け方をしている人が世の中にいっぱい居るようで、自分の小市民ぶりを痛感いたしました。
    いやいや、被災者のおかげで儲けている人たちは、せめて被災者に分け前を払ってくれても良くない???まぁ、くまっしぃは要らないけどさ。

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  3. 世の中似たようなのが多いですね。

    ・子供を預かって稼いでいる児童養護施設と里親
    ・集団移住させた方が安上がりなのに延々と除染

    ああいう土地では志ある若者が脱公共事業!なんて叫んだら土建屋に殺されるのでしょうね。そういう輩を資金援助するのが国土強靭化計画であるわけで。ほんと終わってる。

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    1. コメントありがとうございます。
      東北では動いているお金のケタが何個も違いますから、本当に色々なことがすごいでしょうが・・・被災者の置き去りが心配です。
      本当に必要な公共事業や、復興のために尽力されている土建屋さんも多いでしょうから、そういうものが生きてくるよう願っています。

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